こんにちは、健康心理アドバイザーの酒井悠次です。
論理療法を考案した臨床心理学者のアルバート・エリス博士。
論理療法とは、不合理な信念、つまり合理的ではない偏った考えかたをを修正していく心理療法です。
たとえば、仕事に失敗したとします。その時、「あぁ~もうダメだ。自分はこの仕事には向いていない。もう辞めよう…」というのが不合理な信念。
一方、「失敗を受け止め、その原因の分析と対策をしよう」とするのが合理的な信念です。
人は良くも悪くも同じ出来事が起きても、その人の捉え方次第で変わります。
その出来事を自分の糧(かて)にする人もいれば、自分を苦しめすぎる場合もあります。
エリス博士は、こうした不合理な信念を変えていくことで治療効果があることに気がつきました。
そんなエリス博士にはこんな逸話があるようです。
エリス博士はひどい人見知りで、特に女性とはまるで話ができませんでした。
そんなエリス博士は人見知りを直そうと決意し、100人の女性をデートに誘う行動に出ました。
その結果、デートに応じてくれる女性はいませんでしたが、
エリス博士は「人に拒否をされたらおしまいだ」という不合理な信念を捨てることができ、人見知りを克服したそうです。
100人の女性をデートに誘うのは、少々、極端過ぎな気もしますが、皆さんもエリス博士のように何らかの行動を起こし、体感することで気づきが生まれ、考えかたが変わったことはないでしょうか。
嫌いなこと、苦手なこと、怖いと感じているものでも行動を起こすことで意外に大丈夫だった、できるようになったという経験は少なからずあるかと思います。
つまり、行動することで自分にとってより良い信念に気づけるチャンスが生まれるというわけです。
とはいえ、そう簡単に行動しましょうと言ってもできるものではありませんよね。
恐怖心、不安や心配でどうしてもブレーキがかかってしまいます。
そんな時に私が考える大切なポイントが3つあります。
1つ目は、恐怖を感じることは、決して悪いことではないことです。
なぜなら、恐怖は私たちの生存本能の一部であり、危険から身を守るための重要な役割を果たしているからです。
脳は、過去の経験から「危険」を学習し、同じ状況が再び起こると、恐怖を感じるように私たちをプログラムしています。
この恐怖反応は、本能的なもので、意識的にコントロールするのが難しいです。
たとえば、過去に大勢の前で話す機会があり、その時に緊張してしまったとします。その経験がトラウマとなり、次に同じような状況が訪れると、脳は「危険だ」と判断し、恐怖を感じさせます。
ですので恐怖を感じることはごく当たり前のことであり、むしろ私たちを守ってくれています。
しかし、問題はこの恐怖が行動を阻害してしまう場合です。
この恐怖が行動を妨げ、結果として、新たなチャンスを逃してしまうことがあります。
ですので恐怖心と上手く共存しながら行動することを意識することが大事になります。
2つ目は、小さな一歩を踏み出すことです。恐怖を一気に取り除くことは難しいかもしれませんが、小さな行動を積み重ねることで、徐々に恐怖を克服していくことができます。
たとえば、大勢の前で話すことが怖い場合、まずは友人や家族の前で練習してみるというように、最初の一歩はできるだけハードルを低くします。
そうすることで小さな成功体験を積み重ね、自信につながり、徐々に恐怖を乗り越える力をつけることができます。
さらに、行動することに対してポジティブな思考にもなりやすくなります。
恐怖を感じるとき、私たちはついついネガティブな結果ばかりを想像しがちです。
しかし、小さな成功体験を積み重ねることでポジティブなイメージを想像しやすくなり、行動に移す勇気が湧いてきます。
なので、まずは小さな行動から始めることを意識してください。
最後の3つ目は、肯定的な称賛、フィードバックをもらえる環境を作ることです。
たとえば、コーチングやカウンセリングを利用するのも一つの方法です。
専門家のサポートを受けることで、恐怖と向き合う新たな視点を得ることができ、乗り越えるための具体的なステップを踏み出しやすくなります。
自分一人で頑張るよりも、周囲のサポートがあることで行動力が自然と高まります。
そうした自分をサポートしてくれる環境を作ることを意識するのも行動力を高める大切なポイントです。
恐怖を乗り越えて行動に移すことは、決して簡単なことではありません。
ですが、恐怖心と上手くつき合いながら行動を起こすことはできます。
今回ご紹介した3つのポイントを意識することで、少しずつ恐怖を乗り越えることができます。ぜひ参考にしてみてください。
参考文献
『図解 やさしくわかる認知行動療法』(貝谷久宣、福至井監修、ナツメ社)