こんにちは、健康心理アドバイザーの酒井悠次です。
先日、サッカー元日本代表である鈴木啓太さんのYouTubeチャンネルで、同じくサッカー元日本代表、中村俊輔さんのインタビュー動画を観ていました。
中村俊輔さんはフリーキックの名手として知られ、Jリーグ、海外リーグでも活躍し、日本代表ではエースナンバー10番を背負い、チームの司令塔として日本代表には欠かせない存在でした。
昨年、多くのファンに惜しまれながらも引退されましたが、これからは指導者として日本サッカー界を引っ張っていくと思います。
そんな中村俊輔さんですが、そのサッカー人生は決して輝かしいものばかりではありませんでした。
中学生時代、テクニックは抜群ながらも、身長が低いこともありレギュラーから外れ、横浜マリノスのジュニアユースからユースに昇格できなかったそうです。
プロになってからも、中村さんはサッカー選手なら誰もが憧れる舞台、W杯で大きな挫折を経験しています。
2002年日韓W杯では代表から落選。2006年ドイツW杯はスタメンでフル出場しながらも結果を残せず予選敗退。
そして、2010年南アフリカW杯ではまさかのスタメン落ちという結果になりました。
この時の心境について中村さんは「地獄だった。今までで一番キツかった」と話されています。
年齢的にも最後のW杯になり、この大会に懸ける思いは誰よりも強かったはずです。それが試合に出られないのですから、大きなショックだったことは言うまでもありません。
ですが、中村さんの凄い所はそんな状態からでも、気持ちを立て直して、今の自分にできることを必死に行ったことです。
大会直前に自分はスタメンから外れることが分かっていても、中村さんは決して不貞腐れることなく、むしろ必死に練習をこなし、チームの志気を高めるためサポート役に徹したそうです。
やはり、W杯は短期決戦ですのでチームの団結力がものを言います。中村さんのそうした献身的な行動はチームを一つにまとめる大きな力になったと思います。
そして、日本代表は予選を突破し、見事ベスト16へと進みました。
こうした中村俊輔さんのように、挫折や逆境、困難から自分の心を回復させて乗り越える能力を心理学ではレジリエンスと言います。
レジリエンスとは日本語に訳すと、「回復力」「復元力」「耐久力」「再起力」「弾力」を意味します。
レジリエンス能力が高い人は、大きな失敗やストレス、挫折や逆境、困難が起きても上手に乗り越えることができます。
ですので、近年、学校現場やスポーツ、ビジネスの場においてレジリエンス教育が注目されています。
よくよく考えてみると、私たちの人生は自分の思い描く結果、成功だけを手に入れられませんよね。
むしろ、失敗や挫折、困難の方が多いでしょう。なので、もし心が折れたりしても回復できる力を育てることはとても重要なことです。
精神科医で認知行動療法の第一人者である大野裕さんも
「こころが折れないことより、折れても、復活できる力を育てること」が大事だと述べられています。
では、どうすればレジリエンス能力を高めることができるのでしょうか。
いくつか方法があるのですが、私がおすすめする「賢者のワーク」という方法をご紹介します。
■レジリエンス能力を高める賢者のワーク
「賢者のワーク」は、精神科医の樺沢紫苑さんが自身の著書『ストレスフリー超大全』の中で紹介されているワークです。
このワークを行うことで以下の利点があります。
- 感情を整理できる
- 心を落ち着かせて冷静な思考ができる
- 新しい物の見方ができる
- 行動力が高まる
では実際のやり方を説明します。
(ステップ1) 感情の発散
A4ノートの左ページに、「嫌な出来事」「困難な状況」について、自分の感じた感情をひたすら書きだして下さい。
たとえば、中村俊輔さんの例で言えば、「地獄」「キツい」というようにネガティブな感情を吐き出して下さい。
ネガティブな感情を発散することで、気持ちも少しづつ落ち着き、感情が整理されていきます。
(ステップ2) 時間を置く
いったんノートを閉じ、心を落ち着かせて下さい。
10分〜30分ほど時間を置いている間、深呼吸をする。ストレッチや筋トレ、散歩といった身体を動かすのもいいですね。
身体を動かすことで気分も晴れやすくなります。
(ステップ3) 客観視
再びノートを開き、「賢者」になったつもりで、自分に対するアドバイスを右ページに書き込んで下さい。
ここでのポイントは、ノートの左ページに書いたネガティブな
感情に対して、第三者の立場でアドバイスを書くことです。
中村俊輔さんの例で言えば、
「ここで不貞腐れずに頑張れば、絶対に次に繋がるよ」
「この経験がいつか人生の大きな財産になるよ」
というようにカウンセラー、メンタルコーチになったつもりで、客観的なアドバイスを書いてみて下さい。
面白いもので、自分の視点だけでは思いつかない、見えなかったことが、客観的になることで思わぬ考え、閃きが浮かんできます。
そして、出てきたアドバイスの中で出来そうなものを取り入れてみて下さい。
おわりに
いかがでしたか。よく「失敗は成功の母」とも言われますが、それは失敗から学び、次に繋げることの大切さを教えてくれています。
ですが、それも失敗や挫折、逆境、困難から心を回復させなければ次の行動を起こすのは難しいでしょう。
そんな時、レジリエンス能力はあなたの助けになります。
中村俊輔さんのように、挫折や逆境から上手に気持ちを立て直し、さらに上へと伸ばすことができるようになります。
今回、ご紹介した「賢者のワーク」を上手く活用してあなたのレジリエンス能力を高める助けになれば幸いです。
参考文献
鈴木啓太YouTubeチャンネル 【分岐点】中村俊輔が語るベンチになった南アフリカW杯https://youtu.be/PMVxsPcCTsE
(2021年12月25日)
『「こころの力」の育て方―レジリエンスを引き出す考え方のコツ』(大野裕 きずな出版)
『精神科医が教えるストレスフリー超大全』(樺沢紫苑 ダイヤモンド社)