こんにちは、健康心理アドバイザーの酒井悠次です。
先日、『成功するには ポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則(著)ガブリエル・エッティンゲン(訳)大田直子』という本を読んでいました。
タイトルにあるようにポジティブ思考のデメリットや自己啓発書に書いてある成功法則の問題点を指摘しています。
一見、辛口で思わず耳を塞ぎたくなることも書かれていますが、とても良い本なのでご紹介します。
この本では心理学者である著者のガブリエル・エッティンゲン氏が20年にわたり研究してきた内容がまとめてあります。
ガブリエル氏は長年の研究から、ポジティブな空想や考え方、夢が叶った姿をリアルに思い描く。そうしたポジティブ思考は目標、願いを妨げる原因になることを導きました。
その理由としてガブリエル氏は、
「夢を見るという心地よい行為によって、人は頭のなかで願いをかなえてしまい、現実世界で困難を切り抜ける必要なエネルギーを吸いとられてしまうようだ。」と言います。
たとえば、
ガブリエル氏の行った減量プログラムでは、ダイエットに成功して痩せた姿をイメージする、自分は簡単に痩せれると考えている人ほど減量に失敗しやすい。
その一方でダイエットを阻む障がいをイメージした人ほど減量に成功したという研究結果が得られたようです。
この結果について、
ガブリエル氏は「ダイエットに成功した姿をうっとり夢見た人たちは、減量のために行動する気力がわかなかった」と分析しています。
ガブリエル氏は言います。
「個人的な目標を達成したければ、行動せずただ「きっとうまくいく」と夢見るだけという態度は良く考え直すべきだ。」
確かに、どんな夢や目標でもそれをただ願っているだけでは叶えられません。何らかの行動を起こし、その過程で起きる問題や困難、障がいを乗り越える必要があります。
では、どうすれば願望を願望で終わらせることなく、現実にまで落とし込むことができるのでしょうか。
そのためのアプローチとしてガブリエル氏は、メンタル・コントラスティングという手法を考案しました。
メンタル・コントラスティングでは、願いや夢、目標を設定すると同時にその過程で起きる障がい、問題や不安、心配事といったネガティブな面にも意識を向けます。
そして、それが起きた時に取るべき行動をあらかじめ計画しておくことがポイントになります。
たとえば、
3キロのダイエットが目標だとしたら、それを達成していく上でどんな障がいが起きるでしょうか。
甘い物を食べたくなったり、運動するモチベーションがなくなるといったことが考えられますよね。
そうした時、
もし、甘いものが食べたくなったら、甘い物を食べる代わりにガムを噛んだりする。
もし、運動するモチベーションがなかったら、すぐにできる運動だけでもする。
という具合にメンタル・コントラスティングでは、あらかじめ障がいが起きた時に取るべき行動を計画化しておきます。
ガブリエル氏の研究では、
メンタル・コントラスティングを用いることで運動習慣がついたり、食事の改善、成績向上、ストレス軽減、メンタルのコントロールが上手くできるようになったという研究結果が得られたようです。
余談ですが、私の父親もウォーキングができない、続かないで悩んでいました。
やはり、靴を履いて外で行うウォーキングは少しハードルが高い面もあります。そこで私が10数年前に買ったサイドステッパーという下半身を鍛える健康器具を渡した所、けっこう続いているようです。
というのもサイドステッパーであれば自宅でテレビを観ながらできます。ですので運動するまでのハードルが低くなったのが良かったのかと思います。
このように問題や障がいに意識を向け、それを前提にした対処法、行動を計画することで格段に願望、夢や目標を達成しやすくなります。
さらにガブリエル氏はメンタル・コントラスティングを実践しやすいようにWOOP(ウープ)の法則という4ステップの形にまとめました。
詳しい詳細、やり方は本書を読んでほしいのですが、簡単にやり方をご説明します。
- Wish(願い)
あなたが叶えたい願望、夢や目標を挙げてください。
- Outcome(結果)
願いを叶えた結果、あなたが手にしている結果を挙げてください。
- Obstacle(障がい)
目標達成に向けて起きる障がいや問題。不安や心配ごとを挙げてください。
- Plan(計画)
3番目で挙げた障がいが起きた時にできる対処法、必要な考え方、行動を挙げてください。
それを「もし障がいが起きたら、(4で挙げた◯◯)をする」と対処法、行動を計画してください。
以上がWOOPの法則になります。
大切なことは自分の願い、最善の結果を明確にすること。それと同時に実現するまでに起きる障がいにも意識を向ける。
そして、それが起きた時の対策、行動をあらかじめ計画しておくことがポイントです。
最後にガブリエル氏はポジティブ思考を全て否定しているわけではありません。むしろポジティブ思考を上手く活用するアプローチとも言えます。
ガブリエル氏は次のように述べます。
「夢を見てなおかつ自分が直面しなければならない現実をしっかり見つめることによって、人生に正面から立ち向かう−生活のなかにしっかり実在する揺るぎないものとつき合う−ための力を蓄えるこができる。」
メンタル・コントラスティング、WOOPの法則は、決して魔法のツールではありません。
しかし、この思考プロセスを実践することで、着実に願いを叶えるための一歩を踏み出すことができますので、ぜひ試してください。
参考文献
『成功するには ポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則(著)ガブリエル・エッティンゲン(訳)大田直子』講談社